ご依頼内容
今回のご依頼内容は、個人のお客様からの『30年ほど前の新築時から設置されているお気に入りの食器棚の右横に、なるべく同じようにして食器棚を置きたいのだけど、どうしたらいいでしょうか?』という内容でした。
Before(状況を確認)
拝見させていただくと、築30年とは到底思えない、とても頑丈でしっかりした素敵なお住まいと既存(向かって左側)の食器棚。
話をお伺いするなかで、もともとこの左側にある既存の食器棚は、このお部屋を仕切る形、間仕切りのような使い方で違う位置に設置するように計画されていたそうなのですが、現場が進んでいくときに、現場でお客様が、これは壁面につけて置きたい!!と思われたそうで、それで、この写真の壁の面に設置されたそうです。
このように、そもそも違う場所に置くものだったため、壁面に置くと、右側約90cm分(今、違う食器棚が置かれている場所)が空いたそうなのですが、それでいいです!とお客様が言われ、このように設置されたとのことでした。
それから暮らしていかれる中で、空いた右側の空間には、色が近く、サイズ的に置けるものをお客様自身が市販の家具で探され置かれている状況でした。
こちらのお客様はこれまで、それこそ30年前の新築時から現在もこのお住まいの1階で美容室を経営され、一生懸命お仕事をされてきました。
そしてお客様は、これまでキッチン・トイレ・洗面台など少しずつ水廻りなど必要な箇所をリフォームされてこられたのですが(ほとんどの住宅設備機器を前職で私が担当して納めさせていただきました)必要な箇所のリフォームが完了され、またお仕事を頑張って頑張って、最後にこのリビングダイニングのお部屋の食器棚について、左側と同じように右側も統一して、いつも過ごす場所なので、より居心地よく快適にすることを最終的な目標といいますか励みに頑張ってこられたそうなのです。
「私ね、これまで優子ちゃんにひとつひとつ新しくしてもらってきたでしょ。新しくなって希望も叶えてもらってもうそれが嬉しくて嬉しくて。またお仕事頑張ろう!!ってこれまでそれが励みにお仕事頑張ってこれたの。そして最後にここを揃えるのが夢なの!!」
そんなことをおっしゃっていただき、その想いをお伺いした私は、今回のお客様の夢を叶えるべく、
何としてもなるべく統一感をもって壁面一面を理想通りに仕上げたい!!
と強く思ったのでした。
どうしたら叶う?
ではどうしたらよいか。
私のこれまでの経験と感覚から
『これは私がしっかり図面を書き、オーダー家具で作っていただければ叶うはず!!』
と思いました。
そこですぐに一人の男性が頭に浮かび、すぐに連絡を取りました。
それは、私が2019年に福岡まで通っていたYouTube講演家 鴨頭嘉人さんが学長を務める「話し方の学校」の同じクラスメイトであり、家具の名産地、福岡県大川市でおしゃれで素敵なオーダーメイドの家具やさんを経営されているシルヴァンさんの志岐さん!!
超ダンディーで男前な方です!!
佐賀よかさんという有名なユーチューバーさんがオーダー家具をそろえる動画でも登場された方です。
そのケンちゃん(志岐さん)がすぐに思い浮かび連絡、相談すると、快諾してくださいました!!
といってもこのコロナ禍。そして距離も長崎県諫早市と福岡県大川市。
今回はなるべく現場へ来てもらわずに完成まで持っていこうと考えました。
そこで私の出番です。
これまで新築やリフォームの現場を経験してきてモノを納める場合に注意して見るべきポイントだったり、今回と違ってオーダーではありませんがメーカーさんの商品も多く販売させていただいてきましたので、何を確認するべきか、メーカーさん(作り手)はどの情報を知りたいのかは押さえられているつもりです。
そしてまたこれも過去の経験から、正しい採寸だったり、それをCADで正確に図面化することができますし、今は写真や場合によってはテレビ電話でいくらでも正確に伝える手段があります。
だから大丈夫だと思いました。
しかし今回もっとも重要なことは、新規で作りながらも、既存の物と雰囲気、色、見た目、ともにとても似せなくてはいけないということ。
希望されるサイズで食器棚を新たにただ1つ増やすというのとは少しわけが違います。
そこが一番の難題であり、それをするために重要なポイントなのは、『材質・塗装・そして正確な寸法』だと思いました。
そこでまずはシルヴァンさんの志岐さんに、私が撮って送った写真から材質を割り出してもらいました。
場合によっては扉を送ろうかなと思ったのですが、そこはやはりプロ。
写真だけで「これはブリトーやねー」と即答。
材質が決定しました。さすが!!
塗装については志岐さんもわたしも意見一致で、最終的に既存の扉を送って色を合わせていただくことになりました。
あとは正確な採寸とプラン図の作成。
ここが私の力量になります。
ということで今回は『オーダーメイド家具のプランニング』というお仕事で引き受けました。
ですので、シルヴァンさんに現場にきてもらうことは1度もなく、全てシルヴァンさんとはフェイスブックのメッセンジャーを使ってのやり取りのみ!!
あとは私の図面とシルヴァンさんからの確認で納品を迎えました。
(とは言っても私一人では勘違い、見間違いがまったくない!!とは言い切れませんので夫にも協力してもらい、間違いないか確認してもらいました。もし収まらないとなると取り返しがつきませんですので!!)
お客様からは最終的に出来上がった食器棚の再現性と言いますか、あまりの出来具合に、
「大川まで打ち合わせにいってくれたんでしょう??ありがとうね!!」
と言われましたが
「いえいえ、いっていないんですよ。全部オンラインで完結しました。」
とお答えしました。
すごい世の中ですよね。
コロナでなかなか移動できないならできないなりに、頭を使って今の進化した技術を使えばなんでもできるんだな!と思いました。
その全貌はのちほど!!
ではこれなら夢が叶う!!が決まったところで実現に向けて行動に移していきます!!
発注に向けての準備
先ほどお話したように、材質は写真から志岐さんが分かってくださり決定し、塗装は最終的に既存の扉を発送することに決まりましたので、あとはモノのサイズや見た目を間違いなく図面化していきます。
私が考えたのは、左隣にある既存の食器棚となるべく同じようにされたいというご希望から、ただ、同じようにガラス戸をつけるという発想ではなく、ガラス戸の部分はどの位置にあるか、本体に対し扉自体がどの位置についているか、ついていないところのスキマは?けこみの部分(一番下の足元の部分)はどれくらいバックしているかなどをミリ単位で模写していきました。
それなら絶対見ため的に「これは同じものだ」と思えると思ったからです。
たとえば20ミリではなく、忠実にお伝えすれば22ミリのところもあります。
それをどう作られるかは作り手(シルヴァンさん)の判断ですが、私としてはありのまま、そのままで一度図面を書いてお送りしようと思いました。
図面を書く際に意識したのは、どのように書けば作り手がわかりやすく作りやすいかということ。
こう作ればいいんだね!というのがそのままわかる図面にしようと思いました。
しっかり採寸後、書いたのが下のCADになります。
高さについては今回新しく設置する右側の食器棚上部にはエアコンがあり、将来、修理や取り換えの可能性があるので既存の食器棚と同じではなく、お客様のご希望の高さとエアコンのことを考慮して1m85cmになりました。
私が書いた図面とメッセージのやりとりででシルヴァンさんにもしっかり寸法や位置を理解していただくことができました。
発注~家具の制作期間
そして正式に発注をかけて、あとは完成を待つのみ!!
とはいってもさすが人気のシルヴァンさん!!順番もあり納期はかかりました。
でもお客様も
「急ぐところではないからあせらずゆっくり作ってくださいとお伝えして~」
と言ってくださり、ありがたかったです。(長く商売をなさっているからか昔からこちらのことまで気遣ってくださる方なのです。)
そして完成近くなると、既存の食器棚の下側の扉を1枚お借りし、梱包してシルヴァンさんへ発送。
それをもとに色を合わせていただきました。
シルヴァンさんの工場より塗装後の写真を送っていただきました。
左側が、今回発送したもともとの食器棚の扉。
右側が、まだ艶出し前ではあるそうですが塗装を終えた新規食器棚の扉だそうです!!
なんと!!びっくりするほどそっくりです!!
※既存の食器棚はもともとの塗装の色から、どんなに状態がいいといっても30年という年月で多少なりとも紫外線などの影響などから色は変わります。今回、新食器棚には今新しく塗装するわけですので全く同じ色にすることはどんなに似せても難しいと思われます。
そこはお引き受けのときにご説明してお客様にもご納得いただいております。
そして塗装されて組み立った食器棚の写真を送っていただき興奮しました!!
うわぉ!!なんと!!!既存の食器棚と雰囲気、色合い見事にそっくりです!!
なんという丁寧なつくりと私が書いた本当に細かい寸法までしっかり押さえ、忠実に制作していただいて・・・(涙)さすがシルヴァンさんだと感動しました!!よかった!!シルヴァンさんにお願いして。(涙)
これは納品が楽しみすぎます!!
お客様の喜ぶお顔が目に浮かんできます!
早く納品されないかな・・・ワクワク!
いよいよ納品の日!!
現場に到着すると、いつも準備が素晴らしいお客様はすでにこれまで置かれていた食器棚を必要な知人の方に譲られており、お部屋にはなく、中に入っていた食器も全てテーブルの上に出されていて、準備万端でした!!
そしてついにシルヴァンさんが大川から長い道のりを経て、到着!!
(この日はシルヴァンさんから家具を定期的に出している長崎便がなかったそうで、志岐さんと志岐さんのお姉さまが自ら設置にお越しくださいました!!ありがとうございます!!)
食器棚の実物を初めて拝見し、なんという素敵な仕上がり!!すでに私はこの時点で感動!
そしていよいよ据え付ける場所への設置。
置いていただくと、ドンピシャ!!
プラン通り、イメージ通りです!!
(上にエアコンがあり、将来取り換える可能性があるためお客様の希望の高さになっています。右側はコンセントのコードをはわせたいため少しだけ余裕を見ています。)
おぉ~!!
どんどん形になり、事前に工場からの写真を見ている私は完成形を知っているのにどうなるかワクワク、早く完成しないか待ち遠しい!!
ガラス戸のイメージもとなりの既存の食器棚にそっくり!
丁寧なつくりが重厚感を出していますね!!素敵!!
そして志岐さんはさりげなく、既存の食器棚の方の扉の建付けまでさらっと調整してくださっていました。
そのさりげない気配りを私は見逃さず、ダンディーなその姿に思わず・・・
ホレてまうやろーーーーーーー!!!
と叫びたくなりました!!
けんちゃん(志岐さん)ありがとうございます(涙)
いよいよ完成(After)
そしていよいよシルヴァンさんの設置が終わり完成を迎えます。
もう最高すぎました!
塗装は最初にお話したように30年前に設置された食器棚と100%あわせることは経年劣化を考慮すると不可だと考え、お話し、ご納得いただいていましたが、100%はたしかに難しかったと思いますが、ここまであわせていただけたらお客様も十分にご満足、これ以上ない仕上がりになりました。
本当にシルヴァンさんの志岐さん、職人の方々には感謝でいっぱいです。
素晴らしい食器棚をありがとうございました!!
シルヴァンさんの志岐さん、志岐さんのお姉さまをお見送りし、その後お客様には、
「本当に優子ちゃんにお願いしてよかったです。ありがとうございました。」
と嬉しいお言葉をいただきました。
そしてお客様は、
「さぁ私は、あとでゆっくり楽しみながらこの器を自分で楽しみながら戻しまーす」
とおしゃったので、
「お手伝いしましょうか?」
といったのですが、
「大丈夫!趣味みたいなものだからあれこれ考えて楽しんで時間をかけてゆっくりやるから気にしないで。優子ちゃんも疲れたでしょう?もう帰ってゆっくり休んでね」
とおっしゃって、私も
「ありがとうございます」
と現場を後にしたのでした。
私の仕事とは
そして私は45分かけ自宅に戻ってきました。
お客様からの今回のご依頼、
『既存の食器棚とまったく同じようにもうひとつ食器棚を置きたい』
というご依頼に対し、それを満足いただく形で納めることができました。
これである意味、お客様からご依頼いただいた仕事は無事に終わりました。
でも、自宅に戻って撮ってきた下のAfterの写真を見ながら私は思いました。
『ご依頼されたお仕事としては終わったけど、私の仕事としてはやっぱりまだ終わっていない・・・。』
私は何のためにこの今の仕事をしているのか??と自分に問いました。
わたしの今の仕事は『整理収納アドバイザー』です。
こちらのお客様とは前職のときに知り合って10年くらい経ちます。
そのころの私は住宅設備機器の営業。
ショールームで商品を説明したり、実際に営業担当として新築の現場に商品を納めたりリフォーム工事の現場を担当したりしていました。
こちらのお客様とはこのころの私の方が関わりとしては大きく、お客様からするとこの部分の私のイメージが大きいと思います。
現在私が整理収納アドバイザーになったことは知ってはおられますが、こちらのお客様はお掃除がとても上手で、床などもピカピカ、おそらくとくに私の今のお仕事での需要といいますが必要性はないんじゃないかと思っておられると考えました。
それは今までこちらのお客様から整理収納についてのご相談やご依頼を受けたことはなかったからです。
(今回は食器棚の外側といいますが家具のご相談でした)
また、こちらのお客様は本当に食器・器が一番好きでいらっしゃり、食器や器は趣味であり宝物のような存在。来客の方や季節、お料理に合わせて、ご自身が器をチョイスされ、コーディネートされるのがとても好きでいらっしゃって、そのセンスはまさにお店に食事にきたかのよう。
たとえばわたしにお茶を出してくださったときには・・・
とっても綺麗なかわいいミニパフェが入っているような厚みがあって、上が水色で波の形に縁取りされたグラスを冷蔵庫で冷やしていただいていて、そのグラスに丁寧に入れられ冷やされた緑茶と、薄まるといけないからとなんと氷まで緑茶で作ったものを入れてくださるという・・・
もうおもてなしグランプリがあったら優勝されるくらいなんです!!
だからお料理自体もとても上手で繊細に作られたものをご自身のこのお料理はこれで食べていただきたい!!という想いで食器を選ばれるというこだわり、センスを十分すぎるほどこれまで知っている私は、簡単に
『この機会に食器も整理収納しませんか』
という一言が言えなかったのです。
もしかしたら整理作業とは大好きな食器をたくさん処分させられるかもしれないと思われているかもしれないですし、(整理収納アドバイザーは捨てることを推奨していることはないのですが、イメージとしてそう思われることも多いです)
こだわりを知っているからこそ、踏み込んではいけない領域だと思い、今回の食器棚のお話をいただいたときに、もしお客様の方からご要望があれば食器も整理収納を!というスタンスでいたのですが、最後には
「大丈夫、あとはゆっくり自分でしまっていくから~」
という言葉をおっしゃったので帰ってきてしまったのでした。
でも写真を見て感じたのは、現場にいたときもそうでしたが、やはり器が好きな方だからこそ、もちろん素敵なものが多いのですが、その分、量も多いということ。
そしてたとえばカップとソーサーのセットがこちらやあちらというように離れて置いてあったり・・おそらく置くスペースがなくなってあいているところに置いていらっしゃる印象を受けました。
お客様は毎年、波佐見や有田の陶器市に出かけるのがお好きなので、やはりその年ごとにまた新しいものを買って増えていくということになると思いますが、そうなると置く場所にも困っていかれます。
そういう様子を少なからず現場で感じたこと。
あとは、「あとでゆっくりしまうから大丈夫~」とおっしゃった、今回新設した食器棚にいれる予定で置かれていたテーブルの上の食器。(写真のテーブルの上の食器です)
あの量をお一人で戻すのは大変です。
そしてもし一度しまってしまえば、それをもう一度出して食器を整理するという機会はないと思ったのです。
そこで私は考えました。
このままでいいのか!?
もっとお客様が快適に過ごせる方法を、整理収納アドバイザーとしての提案ができるはず。
食器の整理収納のご提案を食器が宝物であるお客様だから断られるかも・・・とそれを恐れて提案しなかっただけではないのか?
私の仕事ってなんだ?!
お客様の希望されるゴールはなんだ!?
それは、大好きな食器を眺め、快適に使いながら、ゆっくりリビングダイニングでくつろぐことではないのか?
ではこのままでいいのか私!?
繰り返す自問自答。
私の仕事ってなんだ!?
そう思ったときには夫に電話をしていました。
『ごめん、わたし、現場でやり残したことがあるから○○(娘の名前)の学童の迎えお願いしていい?』
そしてお客様に2回お電話したのですがお出にならず、お客様宅まで45分かかることも考え、準備をし、うちを飛び出しました。
途中、必要なものを買うためナフコに・・・。
そしてそのままお客様宅へ向かいました。
車の中でもいろいろ考えました。
やはり、今の現状、理想の暮らしにするには食器を整理収納することは必須。それをお客様にご理解いただきお手伝いして理想の暮らしをしていただこう!!せっかく食器棚新しくされたし理想の食器棚が揃ったんだから。整理収納作業のお代はいらないから、なんとかお客様が「いいよ」と言ってくださり、作業できますように・・・
食器が宝物であるので断られるかもしれない・・・
でも提案してだめなら帰ってこよう。まずは提案しないと。その術を知っているんだから。
お客様の理想の暮らしを叶える、それが私の仕事の信念だからです。
お客様宅に戻る
お客様宅に戻ると時間はもう夕方6時半でした。
お客様宅の駐車場でもお電話してみましたが出られない!!
直接ピンポンしてみました・・・ドキドキ・・・
すると玄関がすぐに開き、
『あれ!?優子ちゃんどうしたの!?私あれから食器を入れてたら疲れて寝っちゃって!っていうか、それより入って入って!!私も優子ちゃんにお電話して聞こうと思ってたの!ちょうどよかった!』
とお客様が目をこすりながら言われました。
『すみません、何度か私からもお電話しまして・・・』
『え!?そうなの!?今起きたから気づかなった!』
とお客様は疲れて寝られていたのでした。
でも私はちょうどよかったと思いました。
お客様はしっかりお昼寝で充電されているなら今から整理収納するにはもってこいだと思ったからです。
『ねぇねぇ優子ちゃん、ちょっと来て。私、食器を少し入れたんだけど、ガラスのところにいれるの、どれを入れようか迷って優子ちゃんにアドバイスしてほしくて。見てもらえない?あれ、でも優子ちゃん、なんで戻ってきたの?』
とお客様に言われ、今しかない!!と思った私は、
『実は、食器をしまわれるときに食器も多くお持ちなので、整理しながら収納していかれたら、絶対もっとスッキリ、今より使いやすくなられると思いまして。でも食器を私から扱われるのはあまりお好きじゃないかもしれないと思い、どうしても先ほど言えなかったのでそのまま帰ってしまったのですが、やっぱりもしするなら食器を出されている今しかないと思って戻ってきました。料金はいりませんので、もしよろしければ今から私に食器の整理収納のお手伝いをさせていただけないでしょうか?できましたら元々の食器棚のガラスの戸の中の部分も一緒に整理できたらと思っています!』
さぁ、どうでしょうか!??
今年一番ドキドキしました。
『え!?いいの!?そうよねー!では優子ちゃんにお願いします!!』
断られるのではないかと思っていましたらちょうどされたいお気持ちになっていたのかお客様快諾!!
時間はもう夜7時前。
ここから食器(今回はガラス戸の中の部分と新設の食器棚の分)の整理収納作業、私の本業が始まりました。
私の本業がはじまる
まずはお客様と一緒に棚の中(既存食器棚のガラス戸の中)の食器をすべて出していきます。
「わぁ、ちょうど中が拭けるからよかった!!」
となんと前向きにとらえてくださる優しいお客様。(当日は作業に備えなんと素敵なつなぎ姿のお客様!!)
お客様には棚の中から食器を出していただき、わたしはその食器をどのように、いつ使われるのかを聞きながら、分けていきます。
ここら辺が私の頭の使いどころです。
たくさんの食器と器。どれも本当に素敵です。
食器が一番の趣味・宝物であるお客様ですので、量もたくさんありますが、お客様は素敵なセンスで選ばれたほとんどの食器ををしっかりお使いになられていましたし、思い入れもそれぞれに深い食器ばかりでした。
整理収納のいいところは私個人的に思うのは、普段なかなかない、この『モノひとつひとつと向き合う時間』だと思っています。
全て出し、向き合うからこそわかる、食器ひとつひとつのそれぞれに想い出やもっている目的。
しまったままだったら改めて考える時間はなかなかないですが、整理するために出したからこそ考えます。
今回もたくさんの思い出をお伺いしました。
そして全ての食器を出し終えたとき、その風景を見て言われたお客様の一言。
『もう、わたし、食器はいらない(笑)』
十分すぎるほどに並んだ宝物を改めて再認識し、そう感じられたお客様。
具体的な数でいうと箸置きは120個あるそうです。
この全て出した機会に使っていないものがあれば教えてくださいとお伺いするとさすが食器が趣味のお客様はほとんどを活用されおり使ていない食器はほとんどありませんでしたが、この多くの食器の中で3種類くらいだけありました。
その理由をお伺いすると
・いただいたんだけどどうしても自分の好みではなかった
・似ている物で愛用している物があるから2種類は使わない
ということでした。
その3種類くらいは欲しい方にあげるということで今回食器棚には戻さないようにしましたが、量としてはほとんどもとのままになりました。
ではここからは使いやすいように戻していきます。
私の力量が試されます。
どうしたら使う時とりやすいか、また戻しやすいか。
これが収納を考える時のコツです。
でもこのお客様の場合、食器が趣味という部分もありますので、私は今回、ただ使いやすいだけではなく、趣味として楽しめるように
『眺めて楽しむ、見せて楽しむ、使って楽しむ』
ということを心に想い、収納をしていきました。
収納ポイント:ゾーンをわける
これまでの食器棚の食器は、新しく増えた食器をあいているところにしまわれていたため、あちらこちらに同じ食器があったり、また特に目的やカテゴリーを意識されずに入っていましたが、今回は大きくゾーンをわけることでわかりやすくしました。
中央ガラス部→カップ&グラスの飲み物ゾーンに
とくに量も種類もしっかりあり、お客様が来客にあわせ、選んで出されるというコーヒーカップ&ソーサー。
これらを中央の食器棚のガラス戸に集めて並べることで、コーヒーカップはここから選ぶ!どれがいいかな?としやすく、また来客がダイニングテーブルに座られたときも一番よく目に入る、ある意味、見せる収納としても適所だと思いました。
下の段の食前酒を飲む器もこれまではいろんな場所にありましたが、このように集約することでより使いやすく、またこの方法は『奥並べ』と言いまして、手前にあるものと同じ種が奥に並んでいます。
ですのでまずどの種類がいいか選んだあと、必要数取るということがしやすくなります。
左側ガラス部→食べる時によく使う食器ゾーン
向かって左側のゾーンはキッチン本体に近い部分でもあるので、よく使うお皿ゾーンにしました。
あまり使わないものを奥に、普段よく使うものを手前に、もポイントです。
そして基本1つのスペースに1種類ずつしか置かないようにしています。
なぜかというと使いたい種類のお皿が1回で取れるからです。
あのお皿を使いたいからこのお皿をいったんよけて取るというのは手間になりますよね。
少しでもラクになるように、ラックを使い、なるべく各箇所に1種類ずつのお皿を置いて徹底してとりやすくしています。
見た目もとてもスッキリしました!!
右側ガラス部→季節ものや来客時によく使うものゾーン(見せる収納として)
一番右の食器棚のガラスケースには、上記以外で、見せる収納としてよくお使いの食器だったり、今の夏のシーズンに使われる色味のあるものを収納しました。(こちらはお客様がされていたものほとんどそのままにさせていただきました)
リビングに入るドアの真正面に位置するので、季節の綺麗な色やデザインの器が目を引き、インテリア性も兼ね備えてこちらのゾーンにしました。
いよいよ完成する
途中休憩を取らせていただきながら、いよいよ完成になってきました。
時間はお客様のご了解のもと、10時近く、時間は3時間になろうとしていました。
必要な材料を買っていっていたため、なんとか3時間のこの日のうちに作業を終え完成することができました。
では完成です!!
↑こちらの写真がお客様宅をあとにするときに最後に撮った写真になります。
「優子ちゃんありがとう!!明日ここを眺めながらすきなカップでコーヒーをゆっくり飲みます!!」
とお客様。
私は思いました。
『私の仕事、これにて完了!!』
お客様からの電話
その後2日連続でお客様よりお礼のお電話をいただきました。
「新しい食器棚で統一されて部屋が広く見えます!!食器はとっても使い勝手がいいし、ラクになりました。一緒に食器棚を使う○○さん(従業員さん)も気に入ってスッキリしてるって満足しているよ。カップもこっちがいいね~。朝から掃除機を必ずかけて、見たいという方にはすぐあがってもらって見せて宣伝しているからね~(笑)」
ということでした。
とても満足していただけて本当によかったです。
そしてやっぱりあのままではなく、現場に戻り、整理収納をさせていただいたからこそのゴールだったと確信しています。
本当によかったです!!
シルヴァンさんの志岐さんからは
『YU-SHIは本物のプロ』
という嬉しすぎる誉め言葉をいただきました。
今後もどんなオーダーにもこたえてくださるそうなので、オリジナルで収納家具を求めている方のプランニングやモノの整理収納のご依頼もまたお待ちしております!!
※とてつもなく長いのに最後までお読みいただきありがとうございました。